「完全母乳なのに、産後3ヶ月で生理が再開した」「これって普通なの?母乳の出が悪くなるんじゃ…」授乳中の生理再開は、多くのママが戸惑い、不安を感じるテーマです。インターネット上には様々な情報が溢れ、「授乳中は生理が来ない」という話を信じていた方ほど、その驚きは大きいでしょう。
授乳中の生理再開は、時期やパターンに大きな個人差があり、一概に「いつから」と言えるものではありません。しかし、その背景にはホルモンの働きが深く関わっています。今回は、多くのママの相談に乗ってきた助産師が、授乳と生理再開のメカニズムから、母乳への影響、そしてママ自身のケアまで、詳しく解説していきます。
授乳中の生理再開は、体の回復が順調な証拠でもあります。不安に思う必要はありませんが、正しい知識を持つことで、心身の変化に落ち着いて対応できるようになります。
授乳と生理再開のメカニズム
なぜ授乳中は生理が止まり、そして再開するのでしょうか。その鍵を握るのは「プロラクチン」というホルモンです。
プロラクチン:母乳生成と排卵抑制のホルモン
赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によって、脳下垂体からプロラクチンというホルモンが分泌されます。
プロラクチンの主な働き ・乳汁生成促進: 母乳を作るように乳腺に指令を出す。 ・排卵抑制: 卵巣の働きを抑え、排卵をストップさせる。
この排卵抑制作用により、授乳中は生理が来にくくなります。これを「授乳性無月経」と呼び、かつては自然な避妊法としても考えられていました。
生理が再開するきっかけ
授乳中でも、以下のようなきっかけでプロラクチンの分泌量が減少し、排卵と生理が再開されることがあります。
主なきっかけ
- 授乳頻度の減少: 赤ちゃんの睡眠時間が長くなり、夜間の授乳が空く。
- 授乳時間の短縮: 赤ちゃんが一度に飲む量が増え、授乳時間が短くなる。
- 離乳食の開始: 母乳以外の栄養摂取が増え、授乳量が減る。
- ミルクの追加(混合栄養): ミルクを足すことで、おっぱいを吸う刺激が減る。
- ママの栄養状態の回復: 体が出産可能な状態に戻ったと判断する。
【参考データ】 産後の生理再開時期(2023年 国立成育医療研究センター調査) ・**完全母乳育児の場合:** – 産後6ヶ月以内:約30% – 産後6ヶ月〜1年:約50% – 産後1年以上:約20% – 平均:産後8〜10ヶ月 ・**混合栄養・ミルク育児の場合:** – 産後3ヶ月以内:約70% – 平均:産後2〜4ヶ月
「これって普通?」生理再開に関するママたちの疑問
多くのママが抱える、授乳中の生理に関する具体的な疑問にお答えします。
完全母乳なのに早く再開した場合
産後2〜3ヶ月という早い時期に生理が再開することもあります。これは決して異常ではありません。
考えられる理由 ・ママの体の回復が非常に早い。 ・赤ちゃんが一度にたくさん飲むタイプで、授乳間隔が空きやすい。 ・夜間にまとまって寝てくれる。 ・プロラクチンに対する体の感受性に個人差がある。
「完母なのに産後3ヶ月で生理が来て、すごく焦りました。でも助産師さんに『体が元気な証拠よ』と言ってもらえて安心しました」(28歳・1児の母)
生理が再開したら母乳は止まる?味や量は変わる?
「生理が来たら母乳の質が落ちるのでは?」という心配は不要です。
母乳への影響 ・量: 生理前や生理中に一時的に分泌量が減ることがありますが、多くの場合は授乳を続けることで元に戻ります。 ・味: ホルモンバランスの変化で、味が少ししょっぱくなることがあると言われています。赤ちゃんが嫌がるそぶりを見せることもありますが、一時的なものがほとんどです。 ・栄養: 母乳の栄養価が大きく変わることはありません。
生理が再開しても、母乳育児を諦める必要は全くありません。一時的に出が悪くなったと感じても、授乳回数を増やしたり、水分をしっかり摂ることで乗り切れます。自信を持って授乳を続けてください。
生理周期がバラバラ、これって大丈夫?
再開後の数周期は、生理周期が不安定になるのが一般的です。
周期が不安定な理由 ・排卵機能がまだ完全に回復していない。 ・授乳によるホルモン変動の影響が続いている。 ・育児の疲れやストレス。
25日〜38日の範囲内であれば、しばらくは様子を見て大丈夫です。3ヶ月以上たっても周期が安定しない、出血が長く続くなどの場合は、婦人科に相談しましょう。
授乳中の生理、どう乗り切る?必須ケアと便利グッズ
生理が再開すると、育児に加えて生理のケアも必要になり、ママの負担は増大します。上手に乗り切るための方法をご紹介します。
ママの体調管理:貧血と栄養不足に注意
生理による出血と、母乳生成による栄養喪失が重なり、ママは栄養不足に陥りやすくなります。
特に不足しがちな栄養素 ・鉄分: 貧血、めまい、倦怠感の原因に。 ・カルシウム: 骨粗しょう症のリスク、イライラの原因に。 ・タンパク質: 母乳の主成分、体力維持に不可欠。 ・葉酸・ビタミンB群: エネルギー代謝、赤血球生成に必要。
授乳中でも安心!おすすめサプリメント5選
食事だけでは補いきれない栄養素は、サプリメントで賢く補給しましょう。
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ベルタマタニティサプリ 産後・授乳期向け ・特徴:授乳期に必要な鉄分、カルシウム、DHA・EPAを網羅。 ・価格:1ヶ月分 4,980円
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ピジョン 母乳パワープラス ・特徴:鉄、葉酸、カルシウムに加え、食物繊維も配合。 ・価格:1ヶ月分 1,500円
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和光堂 ママスタイル 授乳ママチャージ ・特徴:水なしで飲めるタブレットタイプ。ビタミン類が豊富。 ・価格:1ヶ月分 1,200円
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ディアナチュラ 鉄・葉酸 ・特徴:貧血予防に特化。吸収しやすいヘム鉄を使用。 ・価格:1ヶ月分 800円
【セルフケアメモ】 サプリメントはあくまで食事の補助です。基本は、和食中心のバランスの取れた食事を心がけましょう。ほうれん草やひじき、赤身肉、大豆製品などを意識して摂るのがおすすめです。
生理用品の選び方とおすすめグッズ
産後のデリケートな体には、肌に優しい生理用品を選びましょう。
おすすめ生理用品 ・オーガニックコットンナプキン: 化学物質フリーでかぶれにくい。 ・布ナプキン: 通気性が良く、体を冷やさない。 ・月経カップ: 慣れれば交換頻度が少なく、育児中も楽。
あると便利なグッズ ・母乳パッド: 生理中は母乳が漏れやすくなることがあるため、必須。 ・サニタリーショーツ: 防水布付きで安心。骨盤サポート機能付きもおすすめ。 ・使い捨てカイロ・腹巻き: 生理痛の緩和と体の冷え防止に。 ・デリケートゾーン用洗浄料: 刺激の少ない弱酸性のものを選ぶ。
次の妊娠を考えている方へ:避妊の重要性
「授乳中は妊娠しない」というのは神話です。生理再開は「排卵が再開した」サイン。避妊を考えていない場合、すぐに次の妊娠に至る可能性があります。
生理再開=排卵再開
・最初の生理の前に、すでに排卵が起こっている可能性があります。 ・つまり、生理が来ていなくても妊娠する可能性があるのです。
授乳中に可能な避妊方法
・コンドーム: 最も手軽で、母乳への影響もありません。 ・ミニピル(プロゲスチン単独ピル): エストロゲンを含まず、母乳育児中でも服用可能な経口避妊薬。産後1ヶ月から開始できます。(要医師処方) ・IUD(子宮内避妊具): 長期間高い避妊効果が得られます。
次の妊娠計画について、パートナーとしっかり話し合うことが大切です。体の回復のためにも、少なくとも産後1年は避妊することが推奨されています。
婦人科を受診すべきケース
生理の再開に関して、以下のような場合は婦人科の受診を検討しましょう。
受診の目安 ・断乳後3ヶ月以上たっても生理が再開しない。 ・再開後の生理周期が極端に不規則な状態が3ヶ月以上続く。 ・出血量が非常に多い(1〜2時間でナプキンが満杯になる)。 ・生理痛が産前より明らかにひどくなった。 ・不正出血がだらだらと続く。
これらの症状は、ホルモンバランスの乱れだけでなく、子宮の病気などが隠れている可能性もあります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 生理が再開したら、断乳した方がいいですか?
A. いいえ、その必要は全くありません。WHO(世界保健機関)も、2歳までの母乳育児を推奨しています。生理が再開しても、母乳の栄養価が大きく損なわれることはありませんので、ママと赤ちゃんのペースで授乳を続けてください。
Q2. 生理再開後、母乳を嫌がるようになりました。
A. 生理周期によるホルモンの変化で、一時的に母乳の味が変わることがあります。赤ちゃんが敏感に察知して嫌がることがありますが、多くは数日で元に戻ります。根気強く授乳を続けてみてください。
Q3. 生理痛が産前よりひどくなった気がします。
A. 産後の子宮の状態やホルモンバランスの変化により、生理痛の程度が変わることがあります。ひどくなった場合は、子宮内膜症などが隠れている可能性も否定できません。我慢せず婦人科を受診しましょう。逆に、軽くなる人もいます。
Q4. 帝王切開だと生理の再開は遅いですか?
A. 分娩方法は、生理再開の時期に直接的な影響を与えないとされています。帝王切開でも経膣分娩でも、授乳の頻度やママの栄養状態など、他の要因の方が大きく影響します。
Q5. 2人目、3人目だと生理再開の時期は変わりますか?
A. 経産婦さんの方が、初産婦さんより生理再開が早い傾向があると言われています。これは、上の子のお世話などで授乳に集中しきれず、授乳間隔が空きやすくなることなどが理由と考えられます。
まとめ:体の変化に寄り添い、ママ自身のケアも忘れずに
授乳中の生理再開は、時期やパターンに大きな個人差があり、早いからといって心配する必要はありません。それは、ママの体が順調に回復している証拠でもあります。
大切なのは、生理が再開しても母乳育児を続けられること、そして、生理が来ていなくても妊娠の可能性があることを正しく理解することです。
生理が再開すると、ママの体は鉄分やカルシウムなどの栄養素が不足しがちになります。バランスの取れた食事を基本に、必要であれば授乳中でも安心して飲めるサプリメントを活用して、ご自身の体もしっかりケアしてあげてください。
育児に追われる毎日の中で、自分の体の変化に戸惑うこともあるかと思います。一人で抱え込まず、パートナーや助産師、医師など、周りのサポートを得ながら、この時期を乗り越えていきましょう。
この記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。産後の体の変化や生理に関する悩みは、個人差が非常に大きいです。不安な点や気になる症状がある場合は、かかりつけの産婦人科医や助産師にご相談ください。
※本記事で紹介した製品の効果には個人差があります。 ※サプリメントを服用する際は、必ず用法用量を守り、アレルギー等に注意してください。